2025年最新|人事担当者必見!リファレンスチェックの具体的な実施方法と注意点
採用担当者や事業責任者にとって、適切な人材を見極め、採用と入社のミスマッチを防ぐことは非常に重要です。最近ではリファレンスチェックの実施率が高まっており、(株)マイナビのアンケート調査(2024年)によると、実施企業は全体の36.6%まで増加しています。
この記事では、リファレンスチェックとは何か、その具体的な実施方法や注意点について詳しく解説します。適切に実施することで、採用のミスマッチを防ぎ、人材配置の最適化や入社後の早期活躍に繋げていきましょう。
リファレンスチェックとは?
リファレンスチェックとは、採用候補者の働きぶりを第三者から取得することです。
具体的には、前職での上司や同僚、取引先などから採用候補者の職歴、職務能力、勤務態度、人物像、実績などの評価を取得します。企業は応募者の適性をより客観的に評価し、採用のミスマッチを軽減し、早期活躍に繋げることができます。
実施方法はいくつかありますが、最近の主流は以下の図のような方法です。
【リファレンスチェックイメージ例】
リファレンスチェックを行う目的
リファレンスチェックを行う目的には、以下のようなものが挙げられます。
採用精度を上げる・ミスマッチを減らす
人材採用には大きなコストが発生します。ミスマッチを可能な限り防ぐためにも、判断材料となる情報が多いことに越したことはありません。
職務経歴書や面接では、分からない実際の勤務の態度や周囲とのコミュニケーションなど、リファレンスチェックは面接での評価に採用候補者の実態を知る第三者の視点を加えることで、採用の精度を上げることができます。
【参考】 採用のミスマッチとは?なぜ発生するのか?原因と解決策を紹介します
履歴書や面接で得た情報の信憑性や正確性を確認する
応募書類や面接は、採用候補者の自己申告です。現実として、面接で思わず話を誇張してしまうことは少なくないでしょう。候補者の経歴やスキルに関する情報を明確にし、経歴詐称といったリスクを低減します。
入社後の早期活躍のために、育成計画を作成する
リファレンスチェックの結果をもとに事前に育成計画を作成することで、入社後の早期活躍をサポートすることができます。また、リファレンスチェックの結果を配属先に共有することで受け入れる側の理解も深まり、オンボーディングがスムーズになります。
【参考】オンボーディングとは?意味や特徴・メリットをわかりやすく解説
リファレンスチェックの現在
リファレンスチェックの実施率
外資系企業の利用イメージが強いリファレンスチェックですが、最近は日系企業の導入も増加しています。
株式会社マイナビのアンケート調査によると、リファレンスチェック実施企業数は2024年に36.6%まで増加しています。また、「今後検討したい」といった回答率も増加しているため、注目度が高くなっています。
リファレンスチェックを実施する理由
なぜ、リファレンスチェックの利用率は高まっているのでしょうか?大きく理由は3つあります。
退職代行の増加
最近は、退職代行サービスを利用するケースが増加しています。
株式会社マイナビの調査データによると、直近1年間に転職した人で退職代行を利用した人は16.6%と増加しています。特に20代が18.6%と最も高く、入社後の早期退職リスクを軽減させるために退職状況を確認したいニーズが高まっています。
コンプライアンスの順守
顧客や社会からの信頼と経営の安定化のためにコンプライアンス意識が高まっています。過去にトラブルのない人材なのか事前に確認することで、レピュテーションリスクを低減させることにも繋がります。
【参考】レピュテーションリスクとは?採用における悪影響や対策について解説
採用時の見極めが難しくなっている
採用候補者の面接リテラシーは年々高くなっています。ネット情報を事前にチェックしたり、面接対策が容易にできるため、限られた選考期間で採用候補者を見極めることが難しくなっています。
リファレンスチェックとバックグラウンドチェックの違い
リファレンスチェックとバックグラウンドチェック(コンプライアンスチェック、ネガティブチェック)の違いについて説明します。前提として、リファレンスチェックとバックグラウンドチェックに明確な定義はありません。提供サービスによって変わりますので、利用される際は定義のズレがないようご注意ください。今回は、一般論として代表的な違いを説明していきます。
リファレンスチェックとは?
上述で記載の通り、採用選考時に書類や面接ではわからない採用候補者の情報を一緒に働いたことのある第三者(現職・前職の職場の上司や同僚など)から取得することです。
バックグラウンドチェックとの違いは以下です。
・利用目的:採用候補者が自社にマッチした人材かどうかを見極めること
・取得できる情報:人物像、スキルレベル、実績の信ぴょう性、勤務状況、勤務態度など
・取得先:第三者(現職や前職の上司、同僚、部下など)
バックグラウンドチェックとは?
採用候補者が提出した情報が真実であるかを確認するための調査です。リファレンスチェックとの違いは以下です。
・利用目的:企業に不利益をもたらすリスクがないかを確認すること
・取得できる情報:学歴・経歴詐称の有無、反社会的勢力との関係、犯罪歴、自己破産歴、民事訴訟歴の有無、SNSの不適切な投稿内容の有無、与信情報、不動産登記情報など
・取得先:各種データベースやweb、新聞情報などから検索
リファレンスチェックの実施タイミングと実施方法
リファレンスチェックを成功させるためには、適切なタイミングで実施し、効果的な実施方法を選択することが重要です。具体的な実施タイミングと実施方法について解説します。
実施タイミング
書類選考・1次面接前
採用候補者のスクリーニングを目的に実施します。選考期間の効率化や人的リソースを節約することができるでしょう。また初期にリファレンスチェックを実施することで、早い段階から採用候補者を深く理解でき、以降の選考活動の質を上げることが出来る点もメリットです。
ただし、注意点として初期のタイミングによる実施は、採用候補者の入社意欲が高くないことがあるので、選考辞退の可能性が高まることも考慮すべきです。
最終面接前
リファレンスチェックの回答結果を参考に、最終面接で深堀りをしていきます。採用候補者が最終的に適任かどうかを確認することができます。
選考辞退を軽減させながら、採用候補者の過去の職歴や業績、勤務態度などの客観的な情報を得ることができ、ミスマッチを防ぐことができるでしょう。
内定前
内定を出したいが最終的に気になる点や確かめたいことがある場合に実施します。
リファレンスチェックの結果を面接に活かすことはできませんが、最終的な内定の決め手として活用することができます。回答結果についても、内定の可能性が高い段階で依頼をするため、より有益な情報が得やすいのも内定前に実施するメリットといえるでしょう。
企業が採用候補者に対して最初から疑念を持っていると感じさせてしまうと、採用候補者のモチベーションが下がる原因です。したがって、リファレンスチェックのタイミングは慎重に選び、適切なコミュニケーションを図ることが求められます。
具体的な実施方法
リファレンスチェックの実施方法は2つあります。
電話型
電話型によるリファレンスチェックは情報を直接推薦者から得ることができ、質問内容をその場で変更できるので柔軟性が高いです。また、その人の声色や反応、回答の一貫性を通じて、より深い洞察を得られるというメリットがあります。
オンライン(web)型
オンライン(web)型ではアンケート形式で回答を取得するので、データとして残すことができます。電話型と違い、推薦者は期日までにいつでも回答できるので、提出率は高くなります。また、回答提出までの期間は日程調整の必要がある電話型よりも比較的短い期間で実施することが可能です。
採用企業の募集職種、役職、実施タイミング、確認していく項目を考慮し、適切な実施方法を選択していきましょう。
リファレンスチェックは誰に依頼する?
採用企業がリファレンスチェックをどの推薦者に依頼すべきか説明していきます。
推薦者として誰に頼むべきか?
リファレンスチェックは採用候補者の直近の状況を把握している現職に頼むことがおすすでですが、現職の社員と人間関係がうまくいかなかったり、転職を話せない状況の場合もあります。そのため、依頼したい推薦者の範囲を広げて前職や前々職の上司や部下に依頼を出すこともあります。採用候補者の置かれている状態を確認しながら、企業は依頼してほしい推薦者のすり合わせを行っていきましょう。
次に、リファレンスチェックを頼める人は次のような関係性を構築している人です。
上司
採用候補者を評価する立場にあり、その方の働きぶりやスキルを把握されていることが多いため、最も適任であると考えられます。
依頼先によっては、採用候補者に有利な内容のみが記載される可能性もありますが、上司と部下の関係上、そのような状況に陥ることは少ない傾向があります。
同僚
上司には見えにくい採用候補者の素顔を知っている可能性が高く、人間性を見極めるのに適しています。
多角的な情報を得られるという点で有用ではありますが、仲が良すぎる場合だと客観的な視点が欠けて恣意的な内容が記載されることがある点は懸念されます。
部下
同僚と同様に採用候補者を過大評価した内容を書いてしまう可能性がありますが、指導を受ける立場からのマネジメントの評価や意見を知ることができます。
おすすめは、関係性の違う推薦者3名から回答を得ることです。
同じ関係性だと視点が偏ってしまうことがあります。多角的に採用候補者の働きぶりを確認していくことで、理解を深めることができるでしょう。
採用候補者に拒否された場合の対応
リファレンスチェックを実施する際に、採用候補者から辞退をされることがあります。
(株)マイナビの調査によると、採用候補者が選考フローにリファレンスチェックがあった場合、どのように感じるか?の質問に対して、19.8%がネガティブに感じるという結果があります。
「自身を信用されていないから」、「選考に不利になる可能性があるから」といった理由があるようです。採用候補者に拒否された場合、どのような対応をすべきか説明します。
別の推薦者がいないか確認を取ってみる
リファレンスチェックを断られる理由として、採用候補者が推薦者に依頼するタイミングが悪いということが考えられます。
そのため、関係性を指定している場合、別の推薦者がいないか確認を取ってみましょう。現職で頼めない人がいるとしても、現職の以前の上司、前職や前々職、取引先、副業先など依頼できる方は多岐に渡ります。
オンラインツールを使ってリファレンスチェックの負担を軽減する
推薦者の時間が確保できず、手間がかかってしまい対応できないというケースもあります。そこで、オンラインで対応が完了するサービスを利用し、推薦者の手間を削減させるという方法も有効です。
リファレンスチェックを行えない場合もある
ここまで断られた際にどう対応するかを説明してきましたが、どうしても採用候補者を採用したい場合、リファレンスチェックを無しで選考を進める選択もあります。
ただし、採用リスクは上がるので、実施無しで進める場合でも必ず「なぜ取得できないのか?」といった理由を細かく確認し、取得できなくとも諦めるべき理由たるものなのかを確認しましょう。
リファレンスチェックの質問内容
リファレンスチェックの質問内容は、採用候補者の業務内容や勤務態度、性格、価値観、職務スキルなど多岐に渡ります。また、質問の「聞き方」によって回答の精度が変わることもあります。
質問内容を丁寧に設計することで、採用企業は採用候補者の実績や人柄を正確に把握することができるでしょう。詳細について説明していきます。
質問数と回答時間
質問数
採用企業が推薦者からどのような情報を取得したいかによって質問数は異なりますが、一般的に10〜20個ほど質問数を設定します。
web型による実施の場合、選択式と記述式を組み合わせて質問項目を設定します。記述式は推薦者の負荷が大きくなるので、質問数は5〜10個程度に収めることがおすすめです。
オンライン型による実施の場合、回答内容によって質問項目を変更できるので、会話の流れから調整していくこともよいでしょう。
回答時間
一般的には推薦者の回答時間が30〜45分程度になるよう調整していきます。
回答時間が45分以上かかる場合、推薦者の時間的負荷が大きくなるため、回答を辞退される可能性が高くなります。
採用企業は様々な情報を取得したいと思いますが、推薦者の回答負荷も考慮しながら、本当に取得したい内容と質問項目を精査していきましょう。
取得までの実施期間(リードタイム)
採用候補者にリファレンスチェックを依頼してから回答を取得できるまで、5~14日程度をみておくとよいでしょう。
web型の場合、いつでも回答できるので、取得までの期間は平均5営業日前後となります。
一方で、電話型だと推薦者との日程調整やヒアリング後の要約業務が発生するので、2週間程度かかることが多いです。取得したい情報とスピード感も考慮しながら実施ツールは検討したほうが良さそうです。
質問内容
質問内容は選択式と記述式を組み合わせて構成するケースが多いです。具体的な質問項目の詳細は以下で説明していきます。
勤務状況
採用候補者の勤務状況を知ることができます。具体的には勤務時間や出勤頻度、緊急時の対応、就業規則の順守、ハラスメント状況、遅刻、早退の頻度、残業・有給休暇の取得状況、カルチャーマッチなどを確認します。
勤務態度
採用候補者が職場でどのような態度や行動を取っていたのか知ることができます。具体的には、仕事に臨む姿勢や責任感、リーダーシップ、規律性、モラルの順守、法令違反、懲戒や懲罰、社内や社外のクレーム・トラブルの有無などを確認します。
性格・価値観
採用候補者の性格や価値観を知ることができます。具体的には、パーソナリティの傾向、仕事のタイプ、モチベーションの上がりやすい環境、大事にしている自分軸、ストレス耐性を確認します。
職務スキル
採用候補者の専門知識や技術的なスキルの習熟度、強みやのびしろを知ることができます。具体的には、前職でどのような業務と役割を担当していたのか、その成果はどの程度だったのか、ポータブルスキル、テクニカルスキル、コンセプチュアルスキル、マネジメントスキル、語学、IT言語の有無や各スキルの習熟度を確認します。
確認方法として、具体的なプロジェクトの実績や事例を挙げてもらうのが有効です。プロジェクトの目標、役割、達成状況、直面した課題とその対処法などを細かく聞くことで、採用候補者のスキルを客観的に評価することができます。また、自己啓発やスキルアップに対してどのように取り組んでいるかも重要なポイントです。採用候補者が業務に対して前向きで成長意欲があるかどうかを見極めることができるでしょう。
様々な視点から質問項目を設計していくことで、多角的に採用候補者を理解することができ、お互いのミスマッチ防止に繋がっていくでしょう。
リファレンスチェックを実施する際の注意点
リファレンスチェックを実施する際には、いくつか注意点があります。これらのポイントを抑えることで、適切かつ公正な評価を行い、法的・倫理的なトラブルを回避できます。事前に確認した上で正しく実施していきましょう。それでは紹介していきます。
応募者の同意を取得する
リファレンスチェック実施の最初のステップとして、応募者からの同意を得ることが必須です。これは、採用候補者が提供した情報を推薦者である第三者と共有することに合意するためです。採用候補者からの同意を得るタイミングは、大きく2パターンあります。
選考プロセスの初期段階で取得
選考プロセスの初期段階で取得することが最も多く、具体的には、応募時に採用企業と採用候補者間で合意している「採用に関するプライバシーポリシー」の中にリファレンスチェックの内容も記載して同意を取得するケースが一般的です。同意書には、取得する目的、個人情報、利用範囲などの項目を記載する必要があります。
リファレンスチェック実施タイミングで取得
選考プロセスの初期段階ではなく、実施するタイミングで取得する場合もあります。例えば、最終面接前に実施する場合、そのタイミングでリファレンスチェックの内容を説明し、「リファレンスチェックに関する同意書」を共有して合意をいただきます。
同意を取得する方法は、口頭、書面、webなどいくつかあります。自社の法務部門やリファレンスチェック提供事業者と相談し、適切な内容を選択しましょう。
このように、採用候補者の同意を得ることは法的な義務であり、トラブルの原因とならないよう運用していきましょう。
個人情報保護法の遵守
リファレンスチェックを実施する際には、個人情報保護法を遵守することが極めて重要です。個人情報保護法は、個人のプライバシーを保護し、不適切な情報の収集や利用を防ぐための法律です。
具体的には、リファレンスチェックの過程で収集した情報は、明確な目的に限定して使用されるべきです。
例えば、採用活動を行う目的、社内人事に活用する目的、採用後の人材育成の目的のみに利用し、他の目的に流用することは避けなければなりません。さらに収集した情報は適切に保管し、不要になったら速やかに廃棄することが求められます。確認する質問内容も採用に関係のない質問(出身地、宗教、家族構成など)も控えた方がよいでしょう。
個人情報の取り扱いに関する社内ルールを明確にし、担当者全員がそのルールを遵守するよう教育することも重要です。これにより、情報漏洩や不正使用のリスクを最小限に抑えることができます。
最後に、個人情報保護法に違反した場合のペナルティについても理解しておく必要があります。違反が発覚した場合、企業は罰金や社会的信用の低下といった大きなリスクを負う可能性があります。法令遵守の重要性を深く理解し、適切な対策を講じることが求められます。
【参考】リファレンスチェックは違法なのか?弁護士に直接聞いてみた
まとめ
リファレンスチェックは、採用活動で重要な役割を果たします。
実施することで、企業は採用候補者の前職に関する働きぶりを取得することができます。結果的に採用のミスマッチを防ぎ、より適切な人材配置に活用できるでしょう。
正しい方法と実施の流れを理解しながら、採用候補者と企業の相互理解を深めていきましょう。
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