学歴詐称が発覚したら解雇できる?企業がとるべき対応と対策とは
「採用した従業員が実は学歴を詐称していた」という事実が、入社後に判明するケースは少なくありません。企業としては、学歴詐称が発覚した時点で解雇できるのか、気になるところです。
結論からいうと、学歴詐称が発覚した従業員は、一定の要件を満たせば解雇できます。ただし、解雇するには必要な手順を追う必要があるため、注意が必要です。
そこで本記事では、採用後に学歴詐称が発覚した際の対応方法や事前にできる対策方法、また学歴詐称以外にも注意したいその他の経歴詐称についても解説します。採用リスクを未然に防ぐためにもぜひ最後までお読みください。
学歴詐称で問われる罪とは?
従業員が学歴詐称をしていた場合、犯罪行為として懲役刑や罰金刑などが科される可能性があります。ここでは、学歴詐称で問われる罪について解説します。

詐欺罪
詐欺罪は、人を欺いて財物や財産上不法の利益を得る行為などをしたときに成立する犯罪です。
学歴を偽ったことにより、従業員が本来よりも多くの収入を得たと判断された場合、詐欺罪に当たる可能性があります。高卒と大卒の月給や賞与、昇給に差がある場合には、会社側が被る損害は少なくないでしょう。
軽犯罪法違反
軽犯罪法とは、日常生活の中で秩序や道徳規範に違反する行為を、比較的軽微な犯罪として規定した法律です。学歴詐称は、軽犯罪法第1条15号に該当します。
軽犯罪法違反の罰則は、拘留または1,000円以上10,000円未満の科料と、比較的軽いものになっていますが、懲戒解雇に該当する場合もあります。
私文書偽造罪
私文書偽造罪とは、行使の目的で権利、義務または事実証明に関する文書または図画を偽造した場合に成立する犯罪です。
採用の場で用いられる履歴書や卒業証明書、資格の証明書などは、私文書にあたります。これらの文書において、たとえば他人の名前を自分のものに書き換える行為などは、私文書偽造罪に該当します。
採用後に学歴詐称が発覚した際の対応方法
続いて、採用後に学歴詐称が発覚した際の対応方法を解説します。対応の手順を誤ると、労務トラブルに発展する可能性もあるため、法的観点も踏まえて慎重に判断しましょう。

事実関係を調査する
学歴詐称が発覚した従業員を懲戒解雇処分する際には、まず事実関係を正確に把握する必要があります。従業員本人や上司、同僚などの関係者からヒアリングを行い、客観的な資料を収集した上で学歴詐称の事実認定を行いましょう。
後に従業員が懲戒解雇を不当であると訴え、裁判を起こすことも想定されるため、学歴詐称を確実に立証できるよう、十分な証拠を確保しておくことが重要です。本人から卒業証明書や履歴書などを提出してもらい、詐称の事実をチェックし、証拠として収集しておきましょう。
弁明の機会を付与する
事実関係を調査し、学歴詐称が判明した場合は、本人に学歴詐称認定をした事実を伝えた上で、弁明の機会を与えることが必要です。従業員本人からすれば過失であると捉えていることもあるため、言い分や反論を聴く機会を与えましょう。
弁明をさせずに懲戒解雇すると、手続き不備として裁判所により無効と判断される可能性が高くなるため注意が必要です。
懲戒処分の判断をする
調査により認定された学歴詐称の事実と、本人による弁明内容を検討した上で、学歴詐称が就業規則に記載された懲戒解雇事由に該当するかを検討します。
詐称の程度や業務上の重要度などによって、戒告・けん責、減給・出勤停止などにとどまる場合もあります。詐称の程度に対して重過ぎる処分は無効となる場合があるため注意しましょう。
内定段階で学歴詐称が発覚した場合、内定の取り消しは可能ですが合理的理由が必要になります。
解雇通知書を交付する
懲戒解雇は、その意思表示が従業員に到達した時点から効力が発生するため、学歴詐称を行った従業員に懲戒解雇通知書を発行し、通知しましょう。書面には本人の署名と受領印も必要です。
なお、従業員に直接懲戒解雇する旨を伝えられない場合は、懲戒解雇通知書を本人宛に内容証明郵便などで送付し、懲戒解雇通知書を交付した事実が証拠として残るようにすると良いでしょう。
採用前にできる学歴詐称の対策方法
続いて、採用前にできる学歴詐称への対策方法について紹介します。採用前に対策しておけば、学歴詐称への対応に時間や手間をとられずに済むので、確認しておきましょう。

履歴書の確認と卒業証明書の提出を求める
まずは、履歴書や職務経歴書に不審な点がないかを慎重に確認することが重要です。学歴や経歴に不自然な空白期間がないかなどを入念にチェックしておくと良いでしょう。少しでも不審に思うことがある場合は、必要に応じてヒアリングを行う必要があります。
さらに、卒業証明書の提出を求め、名義なども含めしっかりと確認しておきましょう。
面接での質問を工夫する
面接では、学業や在学中の経験などについて具体的なエピソードを尋ねることで、学歴の信憑性を確認できます。
どのような勉学に励んだか、在学時代の課題をどのように解決したのか、在学中に注力した事柄など、深掘りして尋ねることで、事実の信憑性が見えてくるはずです。
候補者の回答が具体性に欠ける場合、学歴に差異がある可能性も考えられるため、慎重に判断しましょう。
リファレンスチェックを実施する
リファレンスチェックとは、中途採用を行う際に、応募者の過去の勤務状況や人物像を、前職の同僚や上司などの関係者に問い合わせる調査のことです。
応募者の経歴や実績、スキル、人柄など、書類や面接だけではわからない部分まで把握でき、書類や面接での申告に差異がないかを確認できます。
リファレンスチェックを行うことにより、学歴詐称のリスクを回避できるほか、入社後の配属先のヒントや活躍のイメージもより鮮明になるでしょう。
【参考】リファレンスチェックとは?具体的な実施方法と注意点【2025年最新|人事担当者必見!】
学歴詐称以外にも注意したい経歴詐称
学歴詐称以外にも、採用時に注意したい経歴詐称はいくつかあります。
- 職歴詐称
- 資格・免許の詐称
- 業務実績・スキルの詐称
- 犯罪歴などの隠蔽
- 病歴詐称
経歴詐称も、入社後の信頼関係や業務成績に大きな影響を与えます。そのため採用時に証明書類の提出義務化や面接時の質問の工夫、リファレンスチェックなどで対策を講じることが重要です。
特にリファレンスチェックでは、候補者の表面的な部分だけでなく、人となりや働きぶりなどを採用前に確認できます。業績やスキルなど、実務的な情報を得るのに最適なので、活用してみてはいかがでしょうか。
経歴詐称について詳しく知りたい人は、以下の記事でも紹介しているので、あわせてお読みください。
【参考】経歴詐称されやすい項目や採用前の見抜き方について徹底解説【採用担当者向け】
学歴詐称を未然に防ぐならリファレンスチェックの活用を
学歴詐称は、条件がそろい、手順を踏むことで懲戒処分にできます。しかし、入社後の業務成績に与える悪影響が大きいほか、対応への時間や労力も大きいため、できる限り事前に対策したいところです。
学歴詐称の対策をするには、応募書類のチェックや面接の質問での確認を強化するほか、リファレンスチェックを活用するのもおすすめです。
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