経歴詐称が招く内定取り消しリスクとは?企業がとるべき対策
採用リスクのひとつに、経歴詐称による内定取り消しがあります。内定を出した後に取り消す場合、企業側の対応は「解雇と同じくらい厳しく見られる」ため、不当と判断されないよう慎重な対応が必要です。
本記事では、経歴詐称とは何かをはじめ、内定取り消しにかかわるリスクや、取り消しが認められた事例をわかりやすく解説します。さらに、経歴詐称を未然に防ぐために企業がとるべき対策として、リファレンスチェックをはじめとした方法も紹介します。

経歴詐称とは?
経歴詐称とは、自分の経歴を意図的に偽る行為です。候補者の記載ミスや勘違いではなく、事実と異なる情報を記載したり、都合の悪い事実を隠したりして、実際より良く見せようとするケースを指します。
経歴には、学歴や職歴、在籍期間、役職、資格、業務実績などが含まれています。採用選考は候補者の自己申告に頼る場面が多く、応募書類や面接の段階では虚偽に気づきにくいのが実情です。重大な虚偽が見つかった場合には、経歴詐称と判断されることがあります。
経歴詐称が発覚するタイミングとしては、内定後のバックグラウンドチェックやリファレンスチェックによるものが多いといわれています。
【参考】リファレンスとは?意味とビジネスにおける使われ方|採用時の活用法も紹介
【参考】バックグラウンドチェックとは?その効果と具体的な流れを解説します
増加傾向にある経歴詐称と企業への影響
残念ながら、経歴詐称は年々増加傾向にあると報告する調査結果があります。株式会社企業調査センターの調査によると、採用後に経歴詐称が発覚したことを理由とする企業からの相談件数は、2025年の上半期で前年比141%の増加でした。
転職が増加する背景には、生産年齢人口(15~64歳)の減少や人材の流動化があると考えられます。生産年齢人口は、ピークを迎えた1995年の8726万人から2024年には7372万人と、この30年間で15.5%減少しました。
求職者よりも求人が多い状況になれば、転職希望者が有利(売り手市場)になります。また、前述の調査では、応募書類や面接の準備に生成AIを利用した可能性も示唆されています。
コストをかけて人材を採用したにもかかわらず、経歴詐称により内定取り消しが発生したり、裁判に発展したり、望まない形で注目されてしまったりするのは、企業にとって大きな痛手です。
【参考】経歴詐称されやすい項目や採用前の見抜き方について徹底解説【採用担当者向け】
経歴詐称による内定取り消しが認められる事例
ここでは、経歴詐称による内定取り消しが認められる事例を見てみましょう。
内定取り消しが法律上どのような意味を持つのかに加えて、内定を取り消しできるかどうかの基準は何なのかを知っておくことが必要です。
企業が内定を出すということは、採用選考を通過した候補者に雇用を約束することを意味します。法律では、この時点で労働契約(始期付解約権留保付労働契約)が成立しているとみなされるため、企業側が一方的に内定を取り消すことはできません。
内定の取り消しは、解雇(解雇権の行使)とみなされることから、合理的な理由や社会通念に照らし合わせて妥当だという判断が必要です。その判断基準としては、次のようなケースが挙げられます。
・卒業していない学校を卒業したと偽る
・業務に必要不可欠な資格を保持していない
・実績を大幅に上乗せし業務遂行能力が十分あるように見せかける
・解雇を隠す
・犯罪歴を隠す

経歴詐称による内定取り消しのリスク
経歴詐称による内定取り消しで責めを受けるべきは、虚偽の申告をした内定者のほうです。しかし、そのようなことが起こってしまった場合、企業側も損失を受ける可能性があります。
長引く人員不足や採用のやり直し
採用活動は、欠員補充や増員といった人員不足がなければ実施されません。新たな人材を待ち受けている部署にとって、経歴詐称で内定が取り消しになったという事実は、衝撃を与えるでしょう。解消されない欠員や長引く人員不足は、新たな人材を必要とする部署のストレスを高めてしまう可能性があります。
採用選考のやり直しも必要です。募集から内定までには、どのような人材が必要かをまとめ、求人を公開し、書類選考や面接を経て内定にいたるという一連の選考プロセスがあります。
こうした選考を再度実施するには相応の時間と労力がかかりますし、すぐに代わりの人材が見つかるとも限りません。
損害賠償などを求める訴訟対応
内定取り消しの取り下げを求めて、内定者が訴訟を起こす可能性もあります。自分を偽ってでも入社したかった企業ですから、すぐに引き下がらない人もいるでしょう。
特に、内定者の退職日がもう決まっている場合、収入を失うことから慰謝料や損害賠償の支払いを求めることも考えられます。
そうなってしまった場合、内定取り消しへの対応や訴訟対応という業務が発生します。
法務部門を備えていない企業にとっては、損害賠償や訴訟対応は担当者に負荷をかけるだけでなく、弁護士費用といった金銭的な負担も重なり、コストが高くつくことになりかねません。
経歴詐称による内定取り消し事例
経歴詐称による内定取り消しが認められた事例を確認しておきましょう。
A社は大手コンサルティング会社です。2022年5月、採用選考に通過したXさんに内定を通知しましたが、その後に実施した経歴調査でXさんの経歴詐称が発覚します。説明を求めたところ、Xさんは採用に不利になると考え、応募書類に記載しなかったと回答しました。
Xさんの経歴詐称は、経歴に空白期間はなく、個人事業主として企業と契約し働いていたというものです。しかし、経歴に空白期間があるだけでなく、前職2社とは契約ではなく雇用関係にあったこと、業務遂行が困難という理由から雇い止めや解雇を受けていたこともわかりました。
Xさんの説明を受け、A社は正式に内定取り消しを通知しました。内定取り消しは無効だと主張するXさんは裁判で争いましたが、2024年7月、東京地方裁判所はXさんの訴えを棄却し、内定取り消しを有効と認めました。
これは、内定者の採用可否を判断するうえで重要な事実と評価されたためです。一般的に、内定取り消しに対しては企業側に厳しい判決が下される傾向にあるといわれています。A社の事例は、経歴詐称が内定取り消しの理由になりうることを示す具体例として、今後も注目されるでしょう。

経歴詐称による内定取り消しを未然防止する方法
このような事例は、発生しないのが理想的です。未然防止のために実施可能な対策にはどのようなものがあるか確認しておきましょう。
応募時の提出書類を強化
本記事で取り上げた事例で問題となったのは、応募書類でした。応募時の提出書類で虚偽申告がないか確認できるよう、提出書類を強化しましょう。
・学歴:卒業証明書や在籍証明書の提出を求める
・資格:取得証明書の提出を求める、有資格者一覧表で確認する
・経歴:在籍証明書の提出を求める、応募フォームで虚偽申告がないことを確認する
学歴については、卒業証明書が良いでしょう。中途採用の場合、卒業後20年間は卒業証明書の発行が可能という場合が多いです。在籍証明書や退学証明書の発行に対応している教育機関もあります。資格の場合は、取得証明書の提出を求めましょう。有資格者一覧表が公開されている場合もあります。
経歴の中でも重要なのは、前職や前々職といった、現時点に近いものだといえるでしょう。
在籍証明書があれば、在籍期間の確認が可能です。応募フォームに、虚偽申告がないことを確認するチェックボックスを設けるのもひとつの方法といえます。
採用テストの実施
スキルや実務能力については、簡単なテストを実施しても良いでしょう。
適性検査を実施するという方法もあります。自社でペーパーテストを作成したり、既存のテストを導入したり、面接時に口頭で実務上の課題を与えてみたりと、複数の手段を組み合わせることも可能です。
リファレンスチェックを実施
リファレンスチェックの実施には、虚偽申告を抑止する効果があります。
前職などで自分以外の人からの評価が参考にされるという意識を候補者に候補者に持たせるだけでなく、候補者からの自己申告だけに頼らない第三者視点での客観的な情報を入手することも可能です。
【参考】リファレンスチェックとは?具体的な実施方法と注意点【2025年9月最新|人事担当者必見!】
経歴詐称や内定取り消しのリスク回避はリファレンスチェックで
経歴詐称による内定取り消しは、代表的な採用リスクのひとつだといえます。
採用リスクを回避するための対策はいくつかありますが、リファレンスチェックであれば、候補者による虚偽申告の洗い出しだけではなく、自己申告の信頼性の確認や第三者による客観的な情報の入手が可能です。
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