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リファレンスチェックは違法なのか?弁護士に直接聞いてみた

  • コラム

選考時に求職者の上司・同僚から働きぶりを取得するリファレンスチェック。現状では「それって実は違法なのでは…?」「一体何に気を付ければいい…?」などの不安も囁かれています。今回は、リファレンスチェックにおける法律上の問題点や企業が注意すべき点について、銀座高岡法律事務所 弁護士:梶 智史さんに、インタビューを行います。

【プロフィール】銀座高岡法律事務所 弁護士:梶 智史さん

 

リファレンスチェックとは?

リファレンスチェックとは書類や面接だけでは分からない求職者の情報を一緒に働いたことのある第三者(現職・前職の職場の上司や同僚など)から取得することで、マッチング精度の向上や入社後の育成に活用することです。採用における見極めが難しくなっていく中、新しい採用手法としてリファレンスチェックを導入する企業も増えてきています。

リファレンスチェックは違法?

Q.そもそもリファレンスチェックは違法なのでしょうか?また、どこまでの範囲であれば聞いても良いのでしょうか?

A.リファレンスチェックを実施すること自体は違法ではありません。ただし、厚労省の『公正な採用選考の基本(※)』などで、適性と能力に関係がない事項として指摘されている事項(人種、宗教、家族構成など)については基本控えたほうが良いですね。憲法上の差別禁止やプライバシー侵害にあたる場合があります。
※(https://www.mhlw.go.jp/www2/topics/topics/saiyo/saiyo1.htm

 

Q.違法性のないリファレンスチェックの実施方法を教えてください。

A.リファレンスチェックで気を付けるべき法律については、憲法上認められている「プライバシーの権利」「個人情報保護法」「職業安定法」ですね。これらのリスクを無くしていくために、求職者に確認、同意をとった上で進めることが不可欠です。また出来る限り求職者の同意情報を残すことは意識したほうがいいですね。

参考までにお伝えすると、職業安定法5条の5には、「求職者、労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報…を収集し、保管し、又は使用するに当たっては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、厚生労働省令で定めるところにより、当該目的を明らかにして求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。」と規定されています。求職者の個人情報を取得する際には、本人の同意があれば特に問題はないのですが、業務の目的の達成に必要な範囲内の収集に留めておくべきと考えます。

 

Q.企業側が確認したい項目の1つである求職者の「ストレス傾向」や「病歴」は聞いても良いですか?

A.個人情報保護法の「要配慮個人情報」に該当するため、求職者の同意を得ることが前提となりますね。また、同意があれば聞いても良いとは思いますが、求職者に担当してもらう予定の業務との関連性が必要であると思います。例えば、これは求職者に直接質問する場合になりますが、面接において、ノルマや締切のある業務の場合に「一時的な残業が発生するけれど、大丈夫ですか?」と質問を行った上で、「残業が増えたことでこれまで体調を崩したことがあれば教えてください。」という形で質問するのが適切かと思います。ストレートな聞き方はNGです。

病歴なども目的と意味づけをきちんと伝えていれば問題にはならないケースが殆どです。当然、第三者(推薦者)にこれらを確認する際にも、当人(求職者)に同意を取った上で十分に注意しながら質問をする必要があります。ただし、これらは第三者(推薦者)が知らない可能性もあるため、確実に欲しい情報が取得できるとは限りません。健康診断書なども参考にしながら複合的に判断していくのが良いと思います。

 

Q.違法性のあるリファレンスチェックを実施している場合、レピュテーションリスク(※)につながる可能性はありますか?
※自社に関するネガティブな評判や噂が社会全体に拡散され、ブランド毀損や企業価値・信用の低下を招くリスクのこと

A.違法性のあるケースは複数あるかと思いますが、もちろんリスクはあります。露骨な内容(同意を取らずに勝手に実施するなど)ほど炎上しやすい傾向にあります。リスクを回避するために、リファレンスチェック実施の本質的な目的を理解していただくことが重要です。例えば、「あなたの良いところをもっと知りたいので、前職の企業にお聞きしたいです。」とコミュニケーションを上手くとりながら伝えることです。本来は、求職者のネガティブな情報を引き出すのではなく、お互いのミスマッチ軽減を目的としているはずです。リファレンスチェック=「調査」ではなく、「マッチングの誘発」だと理解してもらいましょう。

 

Q.第三者(推薦者)が訴えられてしまうこともありますか?

A.ほとんど相談事例はありませんが、可能性はあります。嫌がらせでわざと虚偽の情報を伝えたのでは?とトラブルになることも想定されます。そういったリスクを減らすためには、本人の同意や、確認する情報を予め示しておくこと等がやはり重要になってきます。「言った言わない」など水掛け論のトラブルにならないためには、同意情報を残した方が確実です。

 

Q.昨今ではWEB上でリファレンスチェックを行う企業も増えています。個人情報の利用目的の一部で、応募に関するプライバシーポリシーと合わせて同意を取得する企業が多いのですが、そういった場合は、どのようにすれば良いですか?

A.書面ではない場合は、WEBページに書いてあるということを当人(求職者)に伝えることで、見ていなかった、聞いていなかったを防げると思います。WEBページのURLをお送りするなどして後からでもわかる形で共有したほうが良いですね。

 

リファレンスチェック実施後の内定取り消しはNG?

Q.リファレンスチェック実施後、内定の取り消しは可能ですか?

A.これはNGですね。内定を出している場合は原則取り消すことができません。ただし、資格の不所持、賞罰(犯罪歴)の有無、経歴詐称・懲戒解雇などが発覚し、面接や提出書類に虚偽があった場合に関しては、その事情が予め分かっていれば採用をしなかったという場合には、内定の取り消しを行うことが可能と考えられています。

 

Q.必要な業務スキルがない場合の内定取り消しは可能ですか?

A.スキルでの取り消しの判断は、採用の条件になっていたという場合でない限り、正直かなり難しいです。ただし、最初にどう確認しておくかでミスマッチは防ぐことができます。例えば、事前のタイピングテストでA以上が必要といった数値による見える化をしておくことや、リファレンスチェックでスキルに関する質問を入れて確認するなどが重要です。

 

Q.既往症の場合の内定取り消しはいかがでしょうか?求職者が申告せずに後々発覚した場合などの場合はどうなりますか?

A.既往症の度合いによります。例えば、荷物を持つ仕事で腰が痛くて荷物を持ち上げられない。視力を必要とする仕事で目が悪くて業務に取り組めない。など補助やサポートがあったとしても業務を進められないケースの場合は該当します。

 

Q.メンタル(精神面)の場合の内定取り消しはどうでしょうか?

A.メンタルは難しいと思います。どの業務は不可能で、どの業務は可能かの判別がつきづらいためです。これらをスクリーニングするのは難しいと思いますので、やはり内定前の事前確認が重要ですね。

 

Q.過去のパワハラが判明した方の内定取り消しはいかがでしょうか?

A.パワハラがあったという事情のみで、内定取り消しをするのは難しいです。まず、そもそもパワハラといえるのか、パワハラといえたとして、内定の取り消しの理由となるかという点を検討しなければなりません。例えば、職場環境や従業員の性格等からパワハラ的な傾向を有している求職者の採用を避ける必要があり、そのことを求職者に対して面談時に伝えていたとします。その後、パワハラが明らかなものであると判明し、もしこの事実を知っていたら内定を出さなかったという場合は、内定取消できることもあると思います。

また、パワハラの評価については、「一歩間違えれば、死亡事故につながるような行動をとっていた従業員をつき飛ばして叱責した」というものから、「職場で付き合いの悪い社員をランチに誘わなかった」というものまで、した側・された側の感じ方の度合いによるものが大きいため、評価が難しいと思います。

 

リファレンスチェックの活用方法

Q.リファレンスチェック実施後、どのように活用すればいいですか?

A.面接時の印象や情報とリファレンスチェック回答の内容にズレが発生する場合、すり合わせを行うことが必要です。例えば、業務内容の場合だと「リファレンスチェック前は仕事が難しそうとおっしゃっていましたが、推薦者に業務スキルを確認したところ、あなたのレベルだと簡単かもしれないですね。」と求職者に伝えることも有効かもしれません。逆もしかりです。

オンボーディング(新しく入社する社員を有用な人材に育成するプロセス)として適切な業務量や上司との相性などを配属現場に共有することもミスマッチを防ぐのに有効かもしれませんね。

 

バックグラウンドチェックについて

Q.リファレンスチェックと似たようなサービスとして、バックグラウンドチェック(※)も実施している企業が増えてきています。こちらの違法性はいかがでしょうか?
※バックグラウンドチェックとは、候補者から提供された経歴に関する情報が真実であるとの裏付けを取るための調査をすること
例)身元、反社・犯罪情報、訴訟、破産歴の確認など

A.違法ではありません。バックグラウンドチェックでの反社チェック(暴対法関連措置)は公開されている情報に関する限りは問題ないのです。ただし、信用(クレジット)情報など特定の機関のみが保有している情報については、求職者の同意を取得した上でのチェックが必要だと思います。

 

Q.犯罪歴に関してのチェックも問題ないですか?

A.先ほどと同じく公開されている情報から調査することは問題ありませんが、難しいところですよね。特に私生活での犯罪の場合、直接企業のブランドイメージに影響しない内容であれば、それを理由に解雇の理由とすることは難しいとされています。横領など直接的に会社に損害を与えるようなものはもちろんダメですけど。これらも正しく求職者に同意をとった上でチェックすることは全く問題ありません。

 

まとめ

リファレンスチェックを実施する企業が増えていますが、求職者の同意なく実施するなど違法性のあるやり方をしている場合があります。本来は採用企業、求職者のお互いのミスマッチを軽減させる有効な手法ですので、正しい手順と丁寧な説明の上、実施するようにしましょう。

 

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・簡単かつ効率的にリファレンスチェックを実施可能
・求職者・推薦者のユーザビリティも考慮し、できる限り歩留まりを軽減
・募集ターゲットに合わせた複数の質問テンプレートを自由に利用できる
・セキュリティ面、法的観点も入念にチェックした上で設計
・採用ニーズに合わせて選べる料金設定

採用のミスマッチを軽減したり入社後の早期活躍に活用するために、リファレンスチェックを実施する企業も少しずつ増加しています。
ぜひご興味があれば、お気軽にお問い合わせください。

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