前職調査とは?目的や方法、法的リスクと信頼性向上のポイント
企業が採用活動を行う際、候補者の経歴詐称や両者間のミスマッチを防止するのは重要です。その確認をするために有効な手段のひとつとして挙げられるのが、前職調査です。
ただし、前職調査を行うにはあらかじめ知っておくべき注意点などもあり、慎重に対応する必要があります。そこで本記事では、前職調査の定義や目的を紹介した上で、前職調査の方法、行う際の注意点、リファレンスチェックとの違いなどについて解説します。
より安全かつ効果的に採用活動を行うために、参考にしていただければ幸いです。
前職調査とは
まずは前職調査の定義や目的について紹介します。

前職調査の定義
前職調査とは、採用候補者が過去に勤務していた企業や職務内容について、入社日や退社日、経歴、業務スキルなどを確認する調査のことを指します。
また、前職調査はどの企業でも必ず行うというものではなく、専門職や信頼性が特に重視される職種で行われる傾向が高いです。中でも、金融機関や警備業、外資系企業などの採用の際に行われることが多いほか、重要なポジションの採用時にも用いられることが多いです。
前職調査が注目される背景には、中途採用で即戦力の人材を獲得する需要が高まったことが考えられます。
【参考】経歴詐称が招く内定取り消しリスクとは?企業がとるべき対策
前職調査の目的
前職調査は、経歴詐称の防止、採用リスクの軽減、そして両者間のミスマッチの防止などのために行われます。とくに応募書類や面接で伝えられた職務内容や在籍期間、役職などの正確性を確認することで、虚偽の経歴や資格詐称による採用ミスを防止できます。
さらに、候補者の経験やスキルのレベルを把握しておくと、応募ポジションとの基本的な適合度を判断する際に有効です。
候補者について採用前にしっかりと調査し、理解しておくことで、採用後に発生し得る早期退職やトラブル、不正行為などのリスクを防ぎ、採用後の定着率向上につながります。
前職調査の主な方法と特徴
前職調査では、在籍期間や職務内容、出勤状況、業務遂行能力、コミュニケーション能力、問題行動の有無、業務成績などを確認します。まずは、どのような情報を得るための調査なのかを理解しておくことが大切です。
前職調査を行う方法には、電話、書面(メールやWebフォーム)、専用ツールなどがあります。どの方法を選ぶ場合でも、前提として候補者本人の同意を得て、個人情報保護法やプライバシーに十分配慮しましょう。
それぞれの調査方法には、次のようなメリットがあります。
【電話を使用した前職調査のメリット】
- 担当者の口調などで人物像がわかりやすい
- その場で質問の深掘りができる
【書面を使用した前職調査のメリット】
- 担当者が時間のあるときに回答でき、負担になりにくい
- 記録として残るため保存しやすい
- データ化しやすく、複数の候補者を比較しやすい
【ツールを使用した前職調査のメリット】
- 大量採用の際も効率化しやすい
- 回答集計できるツールを使えば自動化や比較が容易になる
- ログが残るため証拠保全がしやすい
こうしたツールの代表例として、オンラインで同意取得から回答管理までを一括で行えるサービスも登場しています。さらにツールを活用することで、より効率的かつ透明性のあるプロセスとして運用しやすくなります。
前職調査を行う際の注意点と法的リスク
前職調査を行う際は、候補者のプライバシー保護や個人情報の扱いに十分注意する必要があります。特に気をつけたいポイントと、法的な観点から押さえておくべき事項を整理します。

候補者本人の同意を必ず得る
前職調査を行う際は、事前に必ず候補者本人の同意が必要です。もし同意なしで前職に連絡した場合、個人情報保護法違反やプライバシー侵害と見なされる可能性があります。
そのため、同意を得る際は、メールや書面など記録に残る方法で、
・調査の目的
・照会する内容
・取得した情報の利用目的
を明示し、署名や返信などで同意を確認しておくと安心です。
調査内容は採用判断に必要な事実確認のみ
気をつけたいのが、個人情報保護法で「要配慮個人情報」と定められている項目です。これは、人種・信条・病歴など、本人に不利益が生じる可能性があるセンシティブな情報を指します。
具体的に、避けるべき質問内容は以下のとおりです。
- 病歴・健康状態
- 家族構成・婚姻歴
- 宗教・政治的信条
- 性的指向(LGBT)
- 出身地 など
これらの情報を取得するには、本人の同意を得る必要があります。もし同意を得ずに取得した場合は、個人情報保護法上の問題につながる可能性があります。
また、前職調査の目的はあくまで採用判断に必要な事実確認に限られるため、原則として「要配慮個人情報」に該当する項目は、質問内容として不適切と見なされるケースが多いでしょう。
情報の取り扱いに注意する
取得した情報は、漏洩などが起こらないよう適切な管理が必要です。調査結果は採用判断以外の目的で利用せず、扱う担当者を限定し、守秘義務を明確にしておくことが求められます。
また、社内で前職調査を行う場合は、個人情報の取り扱いに関する知識を持つ担当者を配置し、採用関係者以外には共有しない体制を整えることが重要です。
得られた情報は保存期間を社内規定に沿って設定し、採用活動が終了した際には速やかに破棄・削除するのが望ましいでしょう。またクラウドやメールで情報を管理する場合は、アクセス権限を制限するなど、セキュリティ面の対策も忘れずに行ってください。
リファレンスチェックとの違いと補完関係
前職調査と混同されやすい「リファレンスチェック」について紹介します。両者の違いや補完関係を押さえることで、より信頼性の高い採用プロセスの構築に役立ちます。

前職調査との主な違い
前職調査とリファレンスチェックの主な違いは、得られる情報の性質と、情報を提供する人物が異なります。
リファレンスチェックとは候補者とともに働いた経験のある第三者に対して、履歴書や職歴書に記載された内容だけではわからない、実際の働きぶりや人物像などを確認するプロセスです。
前職調査もリファレンスチェックも、応募者に関する情報を客観的に確認するという点では共通しています。ただし、前職調査が「在籍期間・職務内容・役職」などの事実確認が中心であるのに対し、リファレンスチェックでは実際に一緒に働いた人物から“働きぶりや人物像”といった定性的な情報を得られる点が異なります。
また、前職調査は調査先を採用企業が選びますが、リファレンスチェックは候補者自身が回答者を指定する点も違いのひとつです。
【参考】リファレンスチェックとは?具体的な実施方法と注意点【2025年9月最新|人事担当者必見!】
リファレンスチェックが前職調査を補完する理由
リファレンスチェックが前職調査を補完するのは、両者から得られる情報の性質が異なり、それぞれの強みを組み合わせることで採用判断の精度が高まるためです。
前職調査は、在籍期間や役職といった客観的な事実確認が中心で、経歴の真偽や基本的なリスク把握に有効です。しかし、候補者の働き方や人物像までは把握できません。
一方、リファレンスチェックは、候補者と実際に働いた人物へのヒアリングを通じて、協調性、成果の出し方、トラブル対応、仕事の進め方など、現場に近い定性的な情報を得られる点が特徴です。これにより、行動特性や働きぶりをより深く理解でき、前職調査だけでは見えないリスクを補完できます。
このように、前職調査で経歴の事実を確認し、リファレンスチェックで人物面をより詳しく把握するプロセスを組み合わせることで、より精度の高い採用判断につながります。
前職調査を行うなら、法的リスクを防ぎ信頼性を高めるリファレンスチェックの活用を
前職調査は、経歴の詐称などを確認する手段として有効です。しかし、調査方法によっては法的リスクを伴うこともあり、慎重に進める必要があります。また、前職調査だけでは候補者の働きぶりや人柄まで把握することは困難です。
そこで注目されているのが、実際に一緒に働いた人物から詳細な情報を得られるリファレンスチェックです。前職調査と併用することで、経歴面と人物面の双方から判断でき、採用判断の精度を高められます。
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